
作者 ひゃっけい さん
花の香りと蘇る記憶
皆さん、こんにちは。花形です。
今年は異常気象のせいか金木犀の香りを平年より長く楽しめたような気がしますが、「花の香りを嗅ぐと蘇る記憶」皆さんには心当たりありますか?
春のクローバーの香りは、日が暮れるまで無心に花冠を作って遊んだ無邪気な子どもの頃の楽しい記憶。
初夏のクチナシの香りは、交換日記にドキドキした初恋の甘酸っぱい記憶。
そして早春の沈丁花の香りは、私にとって悲しく虚しく切ない記憶。
絶対ここ!と心に決めていた第一希望の大学の受験に失敗して、青天の霹靂…どうしよう…親に友達に先生に、いったい何て報告したらいいんだろう…と、1人呆然とトボトボ重い足を引きずって歩いた道のりに、突如として沈丁花の強く甘く凛々しい香りが圧倒的な威厳と風格で私に覆いかぶさった、あの3月の夕暮れのザ・敗北感の記憶。
沈丁花に罪はないのにね…でも私は長年この季節に香る沈丁花を避けて来ました。
それは、あの時の辛い感情が沈丁花の香りと共に、脳の海馬に記憶されているから。
人間の五感の中で、香りを感じる嗅覚だけが、大脳辺縁系から記憶をつかさどる海馬という脳の部位にほぼ直接的に信号を送ることができるのです。
海馬は記憶の保管庫で、匂いを察知するとほぼ同時に該当するファイルを見つけ出し、その時に感じた喜怒哀楽や好き嫌いの感情までもが呼び起こされるという仕組みです。
だから香り・匂いを嗅いだ瞬間に「記憶」と「感情」が蘇るのですね。
この脳と匂いの仕組みはプルースト効果とも呼ばれています。それは、フランスの作家、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の中の、マドレーヌが焼ける匂いと共に昔の記憶が蘇る、という一節から、名付けられているそう。
日本でも少し前に流行った瑛人さんの曲「香水」も、まさにこれがテーマでした。
さて、古代から私たち人間が外敵から身を守るために、できるだけ素早く情報を得るツールとして進化した嗅覚器官と脳の仕組み。つまり『良い匂い』は安全を『悪い匂い』は危険を示唆してくれる機能。
原始脳と呼ばれるこの仕組みを活かしたセラピーは現代ではアロマテラピーと言えるでしょう。しかし今回は、皆さんが良く知っている、好きな香りに癒されてリフレッシュするという方法ではなく、むしろ逆転の発想で、驚くほど共感がぐっと深まり癒される方法を紹介します。
真理子先生もセミナー等で、「病気になる人は感覚的に麻痺していて子どもの感情と隔離してしまっている状態が長年続いたため」とお話しされていますよね。
そこで、例えば花でもアロマオイルの香りでも、食べ物の匂いでも身近に溢れるあらゆる香り・匂いで構いません。嫌だな…不快だな…という香り・匂いに出会ったら、じっくり嫌だね…キライだね…と深く全身で味わうように共感します。それだけで大脳辺縁系から海馬に信号が送られ感覚が刺激を受け、記憶の檻に閉じ込められた〇〇ちゃんの感情に到達しやすくなるのです。
リライフアカデミーでも、体質改善講座やストレス対処講座でアロマオイルを使用したワークを行っています。その中で良い香りに癒されることはリフレッシュとして大切ですが、嫌な香りもスルーしないで、立ち止まって、じっくり感じ味わい、寄り添い、声かけしてあげる事が自分関係構築にとても大切な事をお話ししています。
因みに私はというと…。沈丁花の花には毒があるため、三大香木の一つであるのに精油(アロマオイル)がありません。だから毎年3月に花の香りを香って「あの時は悲しかったね、悔しかったね、本当に苦しかったよね」って徹底的に共感ワークをしたところ、深い心のずっと奥底に沈没していた難破船のような気持ちの塊が大分軽くなってスッキリ!ここ数年はむしろ沈丁花の香りが好きになって、香りを丁寧に再現した香水まで購入してしまいました。
皆さんはどんな香りと一緒に、どんな記憶や感情が蘇るでしょうか?原始脳を上手に活用していきましょうね。お読みいただきありがとうございます。