自身の病気に向き合う行為が、自身の生命力や潜在能力を高めていく


2022年4月18日号
医師 於保伸一 先生


 
長い冬も終わり、春も盛りとなってきました。皆さんは如何お過ごしでしょうか?長い冬を乗り越え、春と共に緩んできた心と身体は、普通に考えると絶好調になるように思えます。しかし現実には、気温や気圧の急激な変化を身体が受け止めきれないため、自律神経が乱れ、体調不良となってしまいます。実は、このような不調に見舞われた時こそ、身体と心を見つめ直すチャンスなのです。
 
偉大なフランスの作家であるマルセル・プルーストは、「病人というものは、正常な人よりも自己の魂により近く迫るものだ」という言葉を残しています。後世の作家に強い影響を与え、西欧文学を代表する作家であったプルーストは、幼い頃から病弱でした。彼もそうしたであろう、自身の不調や病気に向き合う行為そのものが、実は自身の生命力や潜在能力を高めていったのです。
 
考えてみれば、不調な時ほど、自分の感覚が研ぎ澄まされるものです。病気や不調になって、それまで正常な時には気づき得なかった身体の反応や感覚、神経反射の多様性に初めて気づく、ということはよく報告されています。
健康な時ほど、自分の心や身体の声に耳を傾けようという気にはならないものです。
 
私がこれまで医療に携わってきた中で、印象的に記憶に残っているのは、大病から治癒した後、とても元気に社会で活躍されているご老人達を知った時の事でした。癌や治療法が確立されていなかった時代の結核など、罹った疾患は様々でしたが、いずれも共通しているのは、大病を機に、自分自身をより深く知ろうとされていたことでした。自分に向き合う機会が多かった人は、人間的に深い魅力があり、また健康に歳をとっているというのが印象的でした。
 
季節は巡ります。人生の節々や体調にも浮き沈みがあるものです。しかし、このような変化は、実は自分自身をより深く知るチャンスでもあり、自身の生命力を高めていく良いきっかけにもなるものです。是非、共に『今、ここ、自分』に焦点を当て、自身に向き合いながら、日々を過ごして参りましょう。
 
 


 

 
ご感想ありがとうございます。以下にご紹介します。
*頂いた感想全てを掲載できないことをご了承ください。
 

 
今、本当に季節の変化の為、ピタッと調子が悪くなり、あえて無理に何かしようというより、自分の何がいけないのかとか、冷たく見つめるのではなく、このままでいいんだよと、声かけをしてました。
ただ、嵐の過ぎ去るのを待つのも1案と思いますが、おぼ伸一先生の言われているように、大病をされた人にみられるのが、大病を機に、自分自身をより深く、知ろうとしていた、とあったのを読んで、今この時こそ、どこまで人として優しくなれるか、深い人になれるか、チャンスと思って、自分に暖かい目を向けて行きたいと思いました。
 


 
我が家の猫は、春になると暖かい日はとても元気に走り回り、冷え込んだ日は話しかけても全く無反応で昼寝ばかりしています。
わたしも変化の激しい春は何もないようでいて本当は気持ちも体も上がり下がりしているのかも。
猫を見習って自分に正直に向き合わねば、と思いました。
 


 
自分は健康と思いこむ奢りを捨てて、ちゃんと見直したいと思いました。
 


 
『考えてみれば、不調な時ほど、自分の感覚が研ぎ澄まされるものです。』
正に今戦争の最中のウクライナの方々は「平和」「普通の幸せ」を願い、現地の皆さんの感覚が研ぎ澄まされていることでしょう。我々とは比べられないほどに、その願いに毎日を生きているのでしょう。
『健康な時ほど、自分の心や身体の声に耳を傾けようという気にはならないものです。』
平和な日本に住む我々は、今「脳天気」状態なのかもしれない。
戦争は病気です。1日も早く狂った病気が治りますように。
伸一先生の文章を読んでいて、そんな事を考えてしまいました。
 


 
病も時には必要悪ということでしょうか。
自身ばかりではなく家族の不調でも普段見えないことがわかることがあると思います。
考え方を少し変えてみるのもいいかもしれませんね。