こんにちは、於保香峰子です。

2022年6月13日号
オボクリニックカウンセラー 於保香峰子先生


 
こんにちは、於保香峰子です。

恵みの雨の季節ですが、みなさまはどうお過ごしでしょうか。

今回は「味わう」というテーマでお話ししようと思います。


日々忙しくさまざまな雑務に追われたり、あれこれ考え事ばかりしていると、「味わう」という感覚を忘れがちです。
食事を味わうこともそうですし、気持ちのいい風を肌で感じること、美しいものをしみじみと見つめること、流れる音に耳を澄ませること、そして自分の内側で湧いている感情を深く味わうこと。


この「味わう」というのはカウンセリングでも本当によく使う言葉です。
カウンセリングを通してお伝えしている治療方法のほとんどは、言い換えれば「味わう練習」です。感情・感覚を味わえるようになることが、心の病気が治る方法だと実感しています。

今、自分が何を感じているのかを味わう。それがどんな感情・感覚であっても、焦りでも、不安でも、イライラでも、そこにスポットライトを当てて、じーっと味わっていく。すると、不思議とホッとしてきます。そして味わえば味わうほど、自分が自分と近くなっていくのを感じて、ますます安心感は強くなっていきます。

これは私の感覚ですが、何かを味わっている時、まん丸な光の玉のように自分が一つに統合されている感じがします。そして味わっていない時、意識があっちこっちに散らばっている時は、自分がバラバラになっている感じがするのです。このバラバラ状態が極まったのが心の病気だと私は思います。
「自分関係が良い」というのは「自分が自分の味方になる」ということですが、味方とは「味わう方」と書きますよね。つまり、自分の味方であるというのは、自分が心の底で感じていることを、いつでも一緒に味わってあげること。これに気付いた時、漢字ってすごいなと感動してしまいました。


先日、この「味わう」ことの大切さを改めて実感する機会がありました。以前から交流させて頂いている木根尚登さんのライブに行った時のことです。(木根尚登×佐藤竹善スペシャルライブ)。
わたしは音楽を聴くのは大好きですが、今までライブというものにはほとんど行ったことがありませんでした。
しかしこの日、客席で暗く照明が落とされた中、木根さんと佐藤竹善さんが歌う「木蓮の涙」を聴きながら、ライブの凄さを思い知らされました。美しい響きに感激して目をつむると、広い空間に響き渡る音に全身が共振するような感覚を感じました。
さらに木根さんがご自身の曲である「Get Wild」を歌われた時、子供の頃にシティーハンターが好きでよくこの曲を歌っていた私の興奮はまさに最高潮でした。それでも、この時ほどこの名曲を全身で味わい、感動したことは今までありませんでした。目を閉じて曲に没頭しながら聴いていると、本当に全身の細胞がリズムに乗って鼓動しているかのようでした。
大袈裟に思われるかもしれませんが、「なんと豊かな時間だろう。これこそが生きる喜びだ」とまで感じました。観客の中で私ほど元を取った人が果たしているだろうかと思うほど、味わい尽くしました。
於保院長の診察室に「今、ここ、自分が最高」という言葉が飾ってありますが、「味わう」とは正に、「今ここ自分」に意識を戻すことです。そしてこの客席で私はこれ以上ないほどの「いま ここ 自分」を味わったのです。芸術の価値は、まさにここにあるんだと心から感動した1日でした。


今もし、「これが手に入ったら幸せなのに」「いつかこうなれたら幸せなのに」と思っている人は、ぜひ、この文章を読み終えた後、スマホの画面を閉じて、目をつぶってみて下さい。そしてなんの目的もなく、ただ感覚を感じてみて下さい。心の中に何か湧いているなら、それを味わってみてください。それは嬉しいものかもしれないし、あまり見たくないようなものかもしれません。でも、何であっても、ぜひそれを少しの間じーっと味わってみてください。人生は、いまこの瞬間の連続です。今を味わっていない瞬間の連続を「虚しい人生」と呼ぶのかもしれません。そして今を味わい始めた瞬間から、あらゆる面で「満たされた人生」が開かれて行くのでしょう。

私はライブ以来、日常生活の中で「味わう」ということをより意識するようになりました。
いつもは半身浴をしながら映画を見ますが、今日は頭がごちゃごちゃしていたので、お風呂に何も持ち込まず、じわーっとお湯の温かさを感じ、ただ水音に耳を澄ませながら過ごしてみました。これだけのことですが、本当に豊かな時間でした。

部屋を暗くして、キャンドルを焚いて、その時の気分にぴったりの曲を流してじーっと聴き入るだけでも、すごく感動的な気持ちになれます。

味わうというのは本当に簡単なことです。そしてそれこそが人生の醍醐味です。

長くなりましたが、皆さまが色々なことを味わいながら、色んな感情を全て包み込むように感じながら、色鮮やかな日々を過ごされることを心から願っています。

 
 
木根尚登オフィシャルサイト
http://www.kinenaoto.com
 

 
 
 
 
ご感想ありがとうございます。以下にご紹介します。
*頂いた感想全てを掲載できないことをご了承ください。
 

 
「自分の感情を味わう」「じーと味わう」とあって、目を閉じてしてみました。
いろんな感情が湧いてきて、その都度涙が出ました。自分のことをもっと、わかって欲しい、私の心ににスポットを当てて欲しいと、思っていたんだなぁと思いました。
そして、こういう自分はダメと否定する感情ばかりが湧いてきて、ハッと自分を見る目を優しい目で見つめて行こうと思いました。
もっと、もっと自分の感情を味わうのを、していきたいと思いました。