けやき坂のイルミネーションと六本木ヒルズ
作者 ビビ さん 

自分への慈悲力

 


2023年12月18日号
於保伸一 先生

オボクリニックの於保伸一です。
 
患者さんの診療の経過を見ていると、興味深い現象に気づかされます。
 
真面目な患者さんほど、幼少期や成長過程で、他人に気を配り、自分を押し殺し、自分を後回しにして、自分の痛みに気づかないという体験をを何百回何千回と繰り返しています。
その結果、徐々に自己否定・自己抑制的傾向を強化させ、やがてストレスに対する抵抗力を失い、心身の調子を崩してしまうという方が多いのです。
 
そのような患者さんが、治療の過程で、自分自身に向き合い、自分の痛みや不快に気づくようになり、自分を大切にする習慣を身につけていきます。
 
このように自己肯定感・自己開放傾向を強めていくにつれ、心身の調子が良くなっていき、生活を取り巻く諸問題の対処能力をも向上させていきます。
 
人間が自分で自分の問題を解決していく力は大変にバラエティに富んでおり、治療者や患者さん本人の予測を超えるような、奇跡的な現象を往々にしてもたらします。
 
これらの多岐にわたる現象は、通常の投薬治療を中心にする病棟ではなかなかお目にかかれないものです。
これこそが人間の心を治療の原動力とする治療法の醍醐味と感じさせられます。
 
患者さんが問題を抱えている状態から、自分の人生を前向きに捉えられるように転換していく際には、一つの特徴が見られます。
それは、自分自身と他人に感謝と慈愛の心を持つようになることです。
 
他人に対し感謝や慈愛の心を持つのは良いことであるということは誰もが知っていますが、感謝の心を持ちなさい、または感謝の心を持つと良いことが起こると言っている書籍は数多くあります。
 
しかし、ここでコツとなるのは、感謝の念を内側から湧かせることです。
それは、自分に共感し、自分に感謝すること、自分の中の自分関係を最高に良くすることです。
 
「感謝の念を持たねばならない」と自分自身に強制し(この時点で自分関係は悪くなる。)宿題のごとく嫌々でも感謝していくことは、結果的に悪くありませんが、感謝の醍醐味は発揮されません。
 
自分に共感し自分に感謝したときに、自然に湧き出してきた感謝の念と、慈愛の心は他者にも伝わりやすく、自分自身にも大変にすがすがしい心地よさをもたらします。
 
実は感謝は、自分自身にとってすごく心地よくてしかも得だから自然とやってしまう事なのですね。
 
患者さんを見ていると、自己肯定観念が徐々に高まり、自分自身が立派で素晴らしいという自認が出てくると、自分のことをありがたく感じるようになってきます。
これを私は「感謝のバケツ」と呼んでいますが、自分への感謝で満たされたバケツが一杯になってくると、自然と感謝が溢れ出してきます。
 
溢れているので感謝が周りにも注がれます。
自分も心地よいし、他人からしても嬉しくなるので、その場が心地よい空間となっていきます。
 
他者との一体感や心が通じる感覚は幸福感を強めるので、ますます心地よさが深まります。この善循環をもたらす原動力が、正にみなさん自身の中にあるといえます。
 
この原動力こそ本音の自分である「子供の自分」であり、その自分に対して感謝している状態が「自分関係が良い状態」、そしてこれを継続し続けている状態が心地よい幸福な人生をもたらす状態といえます。
 
自分関係に向き合う患者さんたちは、このような素晴らしい変化を見せつけてくれて、治療者側にも感動と喜びをもたらしてくれます。
まさに一人の人には四面歓喜の力がありますね。
 
ぜひこの素晴らしい力が自身にあるということを根底に、日々自分自身を大切にする習慣を磨いていってください。
 
その参考となる(自分への慈悲力)について、12月23日土曜日14時からのオンラインセミナーで、大いに語ります。楽しみにしてご参加ください。
 
 

於保伸一